京都の老舗「よーじや」が2025年3月、60年ぶりにロゴを刷新し、新キャラクター「新よじこ」を発表。SNSでは当初、批判の声が広がったが、併用方針の明示やブランド再定義によって共感も拡大中。観光依存からの脱却を目指す“京都発ライフスタイルブランド”の現在地と未来を読み解く。
60年ぶりに変わった“顔”
京都の老舗『よーじや』
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✅ 見出し | 要点 |
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ロゴ刷新の発表 | 2025年3月、60年ぶりに発表された |
SNSの反応 | 賛否両論が瞬時に拡散された |
社長の狙い | 脱・観光依存とブランド再構築 |
新ロゴの構成 | 手鏡+文字、新「よじこ」と分離 |
若年層の支持 | グッズ好調で新ファン層に届いた |
SNSで賛否を巻き起こした“あのロゴ”の変更、その舞台裏をたどっていこう。
よーじやのロゴ刷新はなぜ話題になった?
2025年3月、京都の老舗「よーじや」が60年ぶりにロゴを刷新したというニュースがSNSを中心に一気に広がった。かの有名な“手鏡に映る女性の顔”が変わると知った人々からは、驚きや戸惑い、そして惜しむ声が多数上がった。
X(旧Twitter)では、「変えないで」「元に戻して」といった声も多く、投稿には6.9万件以上のいいねがついた。だが実際は、旧ロゴが廃止されるわけではなかった。新ロゴとの併用、そして“よじこ”というキャラクターの再構築という意外な方向性に、少しずつ理解の声も広がっていったのだ。
新ロゴとはどんなデザイン?
刷新されたロゴは、旧ロゴの象徴だった「手鏡の中の女性」の顔を大胆に排し、シンプルな手鏡のシルエットと「よーじや」の文字に再構成された。これにより、“あぶらとり紙の店”というイメージを脱却し、ライフスタイルブランドとしての再出発を象徴している。
SNSではどんな反応があった?
初動では否定的な声が目立ったものの、國枝社長によるnoteでの詳細説明や、“新よじこ”グッズの展開によって、特に若年層からは「かわいい」「使いやすい」「親しみがある」と好意的な反応が増加。結果的に、新しい層への橋渡しにも成功しているようだ。
そもそも、よーじやの「旧ロゴ」とは?
旧ロゴは、京都土産の定番「あぶらとり紙」を象徴する存在だった。手鏡の中から無表情にこちらを見つめる女性の顔は、観光客の記憶に深く刻まれている。
旧ロゴの成り立ちと象徴性は?
創業初期に誕生したこのロゴは、“京都らしさ”と“美の象徴”を一枚で伝えることを意図していた。ある種、アート作品のような存在でもあり、あえて無表情にすることで使う人の表情を映す「鏡」として機能していたのだという。
「よじこ」の存在はどれほど浸透していたか?
“よじこ”と名付けられたこの女性像は、長年にわたりキャラクター化もされず、グッズにもなっていなかった。しかし、認知度は圧倒的。いわば「名もなきヒロイン」として、京都土産の顔を担ってきた。
なぜ今、ロゴ刷新に踏み切ったのか?
きっかけは、國枝昂社長が就任した2019年。父親の急病で会社を継ぎ、コロナ禍の影響とともに観光依存の危うさを痛感する。
【よーじやロゴ刷新までの決断の軌跡】
2019年:國枝社長就任
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コロナ禍で観光激減→危機感強まる
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脱観光依存+日常商品の開発開始
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2022年:蕎麦事業など新業態展開
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2024年:ロゴ刷新プロジェクト始動
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2025年3月:新ロゴ+新よじこ発表
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批判→説明→共感獲得→現在へ
観光依存からの脱却とは?
当時の売上の9割は観光客頼み。リピーターは少なく、固定ファンがいないという経営上の危機感があった。「よーじやがこのままでは淘汰されてしまう」という焦燥から、日常使いの製品開発や店舗の見直しが進められた。
読者の「もったいない」という声にどう向き合ったか?
多くの人が「よーじや=あのロゴ」と思っていた。だからこそ、刷新は“伝統を捨てた”と受け取られがちだった。だが、國枝社長はそこに真正面から向き合った。
SNSでの批判的コメントも“よーじやを見続けてきた人”からの声だと考え、「声が届くことそのものがありがたい」とコメント。結果、説明や併用の明示によって批判は収束し、新しい層からの共感が静かに広がった。
批判の多くは「よーじや愛」ゆえの声
理解されるまで丁寧に説明を重ねた
「併用」という着地点が共感を得た
新事業や商品の変化が背景にある?
あぶらとり紙の売上はピーク時の4分の1に。代わりにハンドクリームやリップなどのスキンケア商品が台頭。2022年には蕎麦屋も展開し、ブランドの多角化が進んでいる。
✅ 比較項目 | 旧ロゴ/旧よじこ | 新ロゴ/新よじこ |
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主な構成 | 手鏡+女性の顔 | 手鏡シルエット+文字/新キャラ |
印象 | 無表情・静的 | 柔らか・親しみやすい |
使用用途 | 全商品・企業一体型 | ロゴとキャラを用途分離 |
評価傾向 | 一部で“怖い”印象 | 若年層に「かわいい」と好評 |
✅ 見出し | 要点 |
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よーじやの刷新背景 | 売上低迷・観光依存からの脱却 |
ロゴ刷新の狙い | イメージ一新とブランド再定義 |
新よじこの意図 | 親しみやすさ・共感キャラ化 |
批判の声と対策 | 併用と説明で理解を得た |
京都との関係 | 地元密着と観光バランス重視 |
次は「京都」という都市との関係性に注目してみよう。
新「よじこ」に込めた思いとは?
“よじこ”は、ただの顔ではなく「よーじやというブランドの核」だった。そこに新たな命を吹き込み、親しみやすく、愛されるキャラクターとして生まれ変わらせたのが「新・よじこ」だ。
デザインはどう決められた?
何案も試作し、抽象化と親しみやすさのバランスを調整。手鏡という構造は維持しつつ、キャラとして独立させる方向に切り替えた。結果、「ブランドロゴは文字+シルエット」「よじこはキャラクター」と住み分ける構成に至った。
「かわいさ」戦略の意図とは?
「怖い」「生首に見える」といった旧ロゴへの声に対応し、親近感のある“かわいい”方向へ転換。グッズ化によって若年層ファンの開拓にも成功し、ブランドの未来を託せる存在になった。
ロゴとは何か。それは記憶である。
ロゴとは、記号ではない。人の記憶に宿る“共通の風景”だ。
だから、変えるという行為には、常に“裏切り”のリスクが伴う。
けれど國枝社長は、そのリスクを知りながら飛び込んだ。
旧ロゴの亡霊に縛られ続けることは、進化の放棄に等しいと知っていたからだ。
「怖い」「生首みたい」という声すら、もはや愛着だった。
愛されているからこそ、ロゴは恐れられる。
だが、京都の風景も、人の感情も、時代と共に変わる。
変化に寄り添いながら、残すものと変えるものを見極めること。
それが、今のよーじやの選択だったのだ。