天皇ご一家の生活費が職員に盗まれていた――。宮内庁の若手職員が内廷費から360万円を着服し、懲戒免職と刑事告発に。皇室を支える組織内部で何が起きていたのか?信頼を失った制度は再び立て直せるのか?国民の目が制度の根本を問い始めている。
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【速報】宮内庁職員が「内廷費」から360万円を窃取 国家公務員が皇室財政を侵す前代未聞の不祥事
なぜ事件は起きたのか?
何が盗まれ、誰が犯行に及んだのか?
2025年5月1日、宮内庁は驚くべき発表を行った。
天皇皇后両陛下や愛子さま、上皇ご夫妻の日常費用に充てられる「内廷費」から、侍従職の20代係長級職員が現金を盗み続けていたというのである。
事件が発覚したのは3月下旬。この職員が宿直勤務中に事務室から3万円を抜き取ったことをきっかけに、自白によって過去の不正が明るみに出た。確認されたのは、2023年11月から2025年3月にかけての複数回の窃取。その総額は360万円にのぼる。
宮内庁によると、同職員は「生活費に困っていた」と供述しているという。1回ごとの盗難額は数万円から多いときには数十万円。犯行はいずれも深夜の宿直中に行われており、外部に知られることなく繰り返された。
内廷費とは何か?
「内廷費」は皇室の公務に関係ない、私的生活費として支出されるもので、国費から年間3億2400万円が充てられている。
食費や衣類費、医療費、職員の給与なども含まれており、制度としては国会の承認を経た公的な支出である。これまで、この内廷費が不正に扱われた例は確認されておらず、今回の事件は制度の信頼性を根底から揺るがすものとなった。
どうやって発覚したのか?
異変を見逃さなかった管理職の判断
2025年1月下旬、40代の課長補佐級職員が帳簿と現金の残高が一致しないことに気づいた。直ちに調査に入り、月次の照合を慎重に進めていたところ、3月下旬、3万円の不足が再び発覚。宿直明けの当該職員に事情を聞いたところ、本人が即座に犯行を認めたという。
その場での自白に加えて、過去に帳簿と一致しなかった総額357万円についても「自分が盗んだ」と説明した。この供述によって、長期にわたる着服が一気に判明したのである。
2023年11月〜2025年3月:宿直中に現金を複数回窃取(累計360万円)
2025年1月下旬:管理職が帳簿ズレに気付く
2025年3月下旬:3万円の不足再発で本人が自白
2025年5月1日:懲戒免職処分を公表
宮内庁の管理責任は?
管理体制の不備と処分の内容
宮内庁は今回の事件を重く受け止め、該当職員を5月1日付で懲戒免職処分とした。
同時に、管理を怠った責任として、帳簿を確認していた課長補佐級職員に対し「1か月間、俸給の10分の1を減額する」減給処分を行った。
また、事務主管に対しても訓告を行い、組織的な綱紀の引き締めを促した。宮内庁は「二度とこのようなことが起こらないよう、管理体制を根本から見直す」とコメントしており、今後は内廷費の取り扱いに関する監査体制の強化が急務とされている。
📊 理想と現実のギャップ
管理項目 | 理想(制度上の想定) | 実態(今回の不備) |
---|---|---|
帳簿と現金の照合 | 毎月照合し、職員間で二重確認 | 月次実施も、実際には単独・形式的に実施 |
異常検知時の報告 | 即時に上司・監査担当へ通報 | 疑念段階で報告されず、慎重すぎた対応 |
窃盗時の検知装置 | 原則不正の抑止が制度的に組み込まれている | 抑止機能が機能せず、宿直が盲点となった |
皇室への信頼は回復できるのか?
制度と倫理の境界線
天皇ご一家の生活を支える予算が、職員の手で盗まれる――。この出来事は、多くの国民にとって「裏切り」とも言える衝撃だった。
宮内庁の西村泰彦長官は、「全体の奉仕者である国家公務員として、また皇室のご活動を支える職員として、あるまじき行為。大変遺憾であり、陛下にも深くお詫び申し上げる」と述べている。
制度に守られた信頼と、その隙を突いた現実。その間にあるわずかな綻びが、想像以上に深刻な波紋を広げている。
今回の事件は、「公金とは何か」「国家とは誰のものか」という、根本的な問いを私たちに突きつけているのかもしれない。
宮内庁の管理責任は?
管理体制の不備と処分の詳細
事件の背景には、管理職によるチェック体制の不備があった。
窃盗行為を見逃した課長補佐級職員には、1か月間・俸給の10分の1という減給処分が下された。これは国家公務員法に基づく懲戒処分で、宮内庁としても異例の厳しい対応である。
また、侍従職の事務主管には訓告が言い渡され、組織内での監督責任が明確にされた。帳簿と現金の定期的な照合が機能していなかった事実は、制度上の想定と著しく乖離しており、組織的な緩みが長期的な不正を可能にした一因とみられている。
項目 | 想定される管理体制 | 今回の実態 |
---|---|---|
現金残高と帳簿の一致確認 | 月次/複数人で二重確認 | 単独・形式的な照合でズレ見逃し |
宿直勤務時の監視体制 | 金庫管理・巡回の二重化 | 夜間の監視不在/出入り自由状態 |
異常発覚時の初動対応 | 直ちに上司に報告・監査展開 | 慎重すぎて判断が遅れた |
多くの読者が思ったはずだ。
「皇室の予算でこんな事件が起こるなんて」「他にも見逃されていることは?」――。
制度の信頼が揺らぐとき、国民の感情は「尊敬」から「懐疑」へと移り変わる。
今回の事件は単なる着服ではない。公的な象徴に関わる“信頼の崩壊”でもある。
皇室への信頼は回復できるのか?
綱紀と象徴のバランス
皇室は、象徴であると同時に、人の営みによって支えられている。
その支え手が制度の盲点を突いて私利を得たとき、制度全体の意義までもが問われる。
宮内庁は再発防止策として「現金管理体制の見直し」「帳簿照合の厳格化」を掲げているが、その実行には透明性と説明責任が不可欠だ。皇室への信頼は、制度の整備だけで取り戻せるものではない。
「国家という顔に、ひびが入った」
天皇ご一家の生活を支える金が、職員の手によって抜き取られる。
それはたった数十万円の話ではない。国家というシステムが、“象徴”の内部から静かに侵食されたという事実だ。
金に困った。それが動機だったという。
だが、国家公務員である以上、その手は「全体の奉仕者」として制御されなければならなかった。倫理とは、制度でなく、“自らが縛る”ものだ。
今回の事件は、制度の穴を突いた犯罪であると同時に、象徴の重みに対する鈍感さの証明でもある。
「国とは誰のものか」。その問いが、いま改めて突きつけられている。