「組合費は、どこへ消えたのか?」自治労鳥取県本部で、2億円規模の未報告口座が見つかり波紋が広がっている。組合員に知らせず、会計監査もされていなかった裏金の存在。誰が、いつ、なぜこの構造を黙認していたのか?信頼崩壊の組織に、再生の道はあるのか――。
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自治労鳥取県本部で「裏口座」問題が発覚──総額2億円、信頼はなぜ崩れたのか?
なぜ自治労鳥取に裏口座が?
いつ・どこで発覚したのか?
2023年秋、自治労鳥取県本部で新たに執行委員長に就任した三浦敏樹氏が、内部調査を実施したことが発端だった。調査の中で、これまで公式に報告されていなかった4つの預金口座の存在が明らかになった。いずれも労働金庫の支店で開設されており、名義の中には「退職者共済執行委員長」など実在しない肩書のものも含まれていた。
通帳は所在不明、過去の大会でも報告されておらず、組合員にも存在が知られていなかった。まさに“裏口座”という言葉がぴったりの、簿外資金の実態がここにあった。
何が問題とされているのか?
自治労の県本部規約では、すべての資金口座は会計監査の対象とし、年に一度の定期大会で報告する義務がある。しかし、これらの口座は一度も報告も監査もされていなかった。
2023年7月時点での残高は、合計約2億円。出金記録には数百万円単位の動きも確認されており、資金は一般会計の不足を補うために使われていた可能性が高い。関係者の一部は「長年の慣例だった」と証言し、裏金構造が組織内に定着していた可能性がある。
組合員はこの問題をどう受け止めている?
組合員の声は厳しい。「何に使われていたのか分からない金が2億円? 信じられない」「脱退も視野に入れている」といった意見がSNSや匿名掲示板に相次ぐ。組合費という、公共性の高い資金の運用において、このような不透明さが明らかになったことで、自治労全体の信頼が揺らいでいる。
組合費はどこへ?私たちは何を信じてきたのか
組合費とは、組合員ひとりひとりが毎月納めている大切な積み立てだ。その行き先が長年不明だったとなれば、信頼は地に落ちる。
過去の大会で「財政報告は問題なし」とされていたこともあり、「ごまかされていたのでは」と感じる組合員も少なくない。
- 「脱退も視野に入れている」とする若手職員の声
- 「大会の財務報告をもう一度見直したい」という要望
- 「通帳がない?そんなのあり得ない」と怒りをにじませる反応
項目 | 表口座(公表済) | 裏口座(今回の問題) |
---|---|---|
開設名義 | 組織名または会計責任者名義 | 架空肩書・特定個人名義 |
会計監査 | 毎年実施・大会で報告 | 一切なし・組合員未報告 |
通帳管理 | 明示的管理者あり | 通帳所在不明、管理体制不明 |
組合運営でなぜ裏口座が使われた?
資金流用の背景と慣例の存在
取材によれば、裏口座は少なくとも10年以上前から存在し、歴代の執行委員長のうち数名が認識していた。「補填目的で使ったことがある」と話す元役員もいる。
つまり、不足分を埋めるための“秘密の貯金箱”のような位置付けであり、制度ではなく慣例によって運用されていた。
こうした資金の流用は、組合運営の中で黙認されていた可能性が高い。規約上は完全にアウトだが、内部的には「仕方ない」という空気があったのかもしれない。
制度上の盲点と他地域との違いは?
自治労中央本部によれば、他県の本部から同様の裏口座の報告は受けていない。つまり、鳥取県だけの独自慣行であった可能性が高い。
ではなぜ、そんな不透明な口座が何年も見逃されてきたのか。
中央本部は定期的に報告を受けていたものの、裏口座に関する情報は含まれておらず、「チェックのしようがなかった」と釈明する。
チェック機構はなぜ機能しなかったのか?
チェック機構の形式は存在していた。しかし、機能はしていなかった。
財務報告は提出されていたが、会計監査は形骸化し、誰も“見ようとしなかった”可能性がある。通帳の所在が不明であること自体が、管理意識の欠如を象徴している。
裏口座構造の流れ(責任軸)
【開設】不明確な名義で裏口座開設(10年以上前)
【黙認】歴代執行部が資金を確認/黙認
【補填】組合一般会計の赤字を穴埋め
【未監査】通帳紛失・大会未報告
【発覚】2023年秋、三浦氏の調査で明るみに
見出し | 要点 |
---|---|
▶ 何が発覚? | 簿外の4口座と総額2億円の未報告資金 |
▶ なぜ問題? | 会計監査なし・組合員未報告・通帳不明 |
▶ 背景構造は? | 黙認と慣例、制度の形骸化 |
▶ 次の焦点は? | 調査の進展と責任の所在 |
今後どうなる?組織改革と影響は?
再発防止策や中央本部の動きは?
現執行部の三浦敏樹氏は、「組合員にとって納得できない事実であり、徹底的に調査を行う」と明言。
中央本部も「説明責任が果たされていない状況は正しくない」として、外部監査の導入や新たなガイドラインの策定を視野に入れている。
今回の件を機に、自治労全体で透明性を高める改革が動き出す可能性がある。
組合員や市民の反応は?
「信じてきた組合が、裏でそんなことをしていたなんて」「もう信用できない」という声が後を絶たない。
特に若手職員層を中心に「組合費を納める意味が分からなくなった」との意見も聞かれる。
“存在意義の再定義”を迫られているのは、鳥取県本部だけではない。
透明性とは、制度の問題ではない。それは「見る意志」の問題なのだ。
裏口座の存在は、誰も見ようとしなかった記憶の空白に他ならない。
「知らなかった」「覚えていない」と語る大人たちが、組織の未来を支えることなどできるだろうか。
この事件は、透明に“なれなかった”組織に下された、小さな終わりの鐘だったのかもしれない。
見出し | 要点 |
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✅ 裏口座の全容 | 計4口座・約2億円・10年以上未報告 |
✅ 構造的問題 | 慣例・黙認・通帳不明・監査形骸化 |
✅ 今後の動き | 調査継続/再発防止へ中央本部が関与 |
✅ 社会的影響 | 信頼回復は困難/組合の存在意義が問われる |