MLBは2025年5月、通算4256安打を記録した故ピート・ローズ氏の永久追放処分を解除し、殿堂入りの資格を回復すると発表した。1989年の野球賭博関与による処分から35年。ローズ氏は2024年に死去しており、「故人はもはや競技の高潔性を脅かさない」との判断が下された。倫理と栄誉の分離は可能か――。
ピート・ローズ氏
死後に殿堂資格回復
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野球史に刻まれた“永遠の追放者”が、ついに許された――。
MLB(メジャーリーグ機構)は2025年5月13日(日本時間14日)、故ピート・ローズ氏の永久追放を正式に解除し、その資格を回復させたと発表した。通算4,256安打という大記録を打ち立てながら、1989年に野球賭博への関与により殿堂入りの道を閉ざされたローズ氏。その死後、35年以上の時を経て下されたこの決定は、野球界の倫理観と功績評価のバランスに新たな問いを投げかけている。
ピート・ローズ氏はなぜ話題になった?
● いつ・どこで決定が下されたのか?
今回の発表は、MLBの現コミッショナーであるロブ・マンフレッド氏によって正式に行われた。2025年5月13日(日本時間14日)、米国内主要メディアを通じてローズ氏の「資格回復」が伝えられ、同時に複数の過去追放者の救済も示唆された。
ローズ氏自身は、2024年9月に83歳で亡くなっている。これに先立つ昨年12月、遺族と関係者がマンフレッド氏との面会を果たし、復権に向けた要望を直接伝えていた。さらに、トランプ元大統領が「恩赦」の意向を示していたことも、公的な判断に影響を与えた可能性がある。
● なぜMLBは今、判断を変えたのか?
鍵となったのは、ローズ氏が“この世にいない”という事実だった。MLBは「死後の人物は、もはや競技の健全性を脅かす存在とはなり得ない」という原則を新たに掲げ、倫理規定に一石を投じた。この方針転換は、歴史的な処分を受けた選手たちにも波及するものである。
マンフレッド氏は、ローズ氏の代理人宛の手紙で「この世にいない人間を罰することは、もはや競技の理念にそぐわない」と明言し、“死後復権”という新たなステージをMLBが選んだことを印象づけた。
🟫 歴代永久追放と資格復権の対象
🔸 死後に許される「功績評価」の波紋
この“死後資格回復”の決断は、単なる制度改定ではない。MLBが掲げる「競技の高潔性」は、長年にわたり不変の鉄則とされてきた。だが今回、ローズ氏の評価を「生前の罪と死後の功績」に分けて再考した点に、新たな時代の価値観がにじむ。
特に注目されるのは、「倫理」と「記録」の扱いの線引きである。スポーツ界ではしばしば、記録を打ち立てた選手が後に不祥事で評価を失うが、今回のように「功績のみを復権させる」判断は前例が少ない。
死後でなければ処分解除は困難だった
復権は殿堂入りの可能性を伴う制度改定
野球界全体の倫理基準見直しが加速する可能性あり
他の永久追放者たちはどうなる?
● “シューレス・ジョー”の復権も?
今回の決定で最も注目された副次的影響は、「他の永久追放者にも恩赦が及ぶのか?」という点だった。
実際にMLBは同日、1919年の「ブラックソックス事件」により永久追放処分を受けた“シューレス・ジョー”・ジャクソン氏をはじめ、すでに亡くなっている故人17人についても「資格回復」を発表している。
ジャクソン氏は、ワールドシリーズでの八百長に関与したとされ、100年以上にわたって殿堂入りを阻まれてきた。今回の判断によって、彼の殿堂入りの可能性も大きく開かれたといえる。
MLBは、「死後における栄誉の取り扱い」は新たな章を迎えたと位置づけており、過去の処分者を一括して見直す姿勢を明確にした。
● 選考はどのように行われるのか?
今回の処分解除は「資格回復」に留まり、すぐに殿堂入りが決まるわけではない。
殿堂入りの可否は、2028年に開催される「クラシック・ベースボール・エラ委員会」での選考に委ねられる予定である。この委員会は、現役選手ではなく、歴史的貢献を持つ人物を評価する場であり、過去にも再評価を経て殿堂入りを果たした人物が多数いる。
つまり、ローズ氏やジャクソン氏の功績が改めて“評価対象”として公式に扱われるステージに戻ってきたことが、今回の決定の本質である。
🔁 復権判断の流れ
① 死亡確認(故人のみ対象)
↓
② 家族・代理人の請願提出
↓
③ MLB内部倫理委員会の意見集約
↓
④ コミッショナー判断 → 処分解除決定
↓
⑤ クラシック・ベースボール・エラ委員会で再選考(2028年)
🔸 100年越しの「名誉回復」も
ジャクソン氏のように、野球史における象徴的な事件で処分された人物が再評価されるのは極めて異例だ。
特に1919年の八百長事件は、MLB史の中でも倫理問題の原点とも言える存在であり、その象徴を「功績の面から見直す」動きは、制度自体の再定義とも取れる。
MLBは、この再評価を「時代の文脈で捉える」と述べており、今後さらに多くの歴史的プレイヤーの再検討がなされる可能性もある。
▪️ 補足リスト
100年前の処分者にも適用されるのは初
家族が再評価を求め続けた背景あり
歴史の“名誉修復”としての意味合いも強い
読者が抱く疑問として、「なぜ今さら?」という視点は根強い。
だが、今回の決定は“その人物が野球界に現実的な影響を与える存在ではない”ことを前提とした「死後の名誉」に焦点を当てている。倫理判断と歴史認識のバランスが、時代によって変わることもまた、スポーツ界の一面である。
倫理と栄光、どちらを優先するか?
今回のMLBによる決断は、単なる追放解除ではない。「功績と倫理の両立」という普遍的な問いに対して、MLBがひとつの姿勢を示したという点に意味がある。
● 「記録に赦しはあるか」
誰かが間違ったことをしたとしても、すべてが否定されるべきなのか。
記録に罪はあるのか。罪を犯した者がその記録によって後世に記憶されることを、私たちは許せるだろうか。
MLBの決定は、野球という競技が“物語”であることを改めて示した。
人間の誤りと功績は、同じ過去に属している。罰することと忘れないことの違いを、私たちは今、問われている。
✅ 見出し | ▶ 要点 |
---|---|
処分解除の背景 | 死後であることを根拠に「高潔性」要件を撤廃 |
対象者 | 故ローズ氏・ジャクソン氏など17名 |
今後の焦点 | 2028年の選考委員会による判断 |
問いかけ | 栄誉と倫理、評価は分けられるのか? |
❓ FAQ
Q1. ローズ氏の殿堂入りはいつ決まるの?
A. 2028年の「クラシック・ベースボール・エラ委員会」で選考されます。
Q2. 生前に処分解除された例はある?
A. 現在のところ、MLBの永久追放処分が生前に解かれた事例はありません。
Q3. 他の対象者は誰?
A. 名前はすべて非公開ですが、ジャクソン氏を含む17名の故人とされています。